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ナルチスとゴルトムント さようなら

うっとりと楽しく苦しいムント君の夢、
不安な心のときめき、悩ましく刺激する郷愁、
仲間といる時にも読書や勉強をしている時にも
ムント君はいつも内面に思いを委ねているのでした。
心の、魂の声が彼を遠くへ運び、聞こえる音は
全て母の声でした。

ある日、アンゼルム神父がムント君を良い香りのする
彼の薬局に呼んで葉っぱを見せ、この葉を取って
来るように場所を示しました。
「午後は君のものだ、自然を学ぶことは君達の
つまらない文法を学ぶことと同じように一つの
学問だよ。」
ムント君は勉強よりも好きな任務を受けて喜び勇んで
馬のブレスを駆って出かけました。
説明がちょっと遅れました。
ブレスはBleß, die Blesseは茶色で額に白の入った馬、
ムント君の愛馬はそんな様子なのでしょう。
嬉しくて小一時間程ブレスと走り、言い付かった
オトギリソウを摘んで、足の不自由なアンゼルム神父の
ことを考えます。あの神父様はあと10年、20年と
いきるのだろうか、そして僕は20年後には?
誰にも解らない秘密だ。
カタツムリと遊びながら眠ってしまいました。
彼の靴の上をトカゲが走ります。

色の浅黒い黒髪の女が手に草を持ち、口に花を銜えて(くわえて)
やって来ました。髪には赤いネッカチーフを巻いています。
恐る恐るムント君を覗きこみ、安心したように近づきました。

ムント君が目覚めた時には女の人の膝の上に頭が載っていました。
目を合わせ、唇を重ねて来る女の人、甘いキスに、ふと、
村の巻き毛の娘を思い出すムント君。
女はなかなかムント君を放してくれません。
誘惑と甘い刺激のキスの遊戯、
彼等は夜に会う約束をして別れます。

修道院に戻った時には日が暮れていました。
ナルチスを見つけなければなりません。
断食日でした。
固く禁じられている独房にそっと入ります。
ナルチスは胸の上で手を組み合わせ、目を開けて
粗末な台の上に身を横たえていました。

「ナルチス、あなたの邪魔をしてしまう、許して、
許して下さい。お別れを言いに来ました。」
「僕の傍におかけ、君は行ってしまうのかい?」
ナルチスは法衣の袖から出ている長く白い指を見つめ、
疲れた厳しい顔でしたが声は微笑んでいました。
「必要なことだけ話たまえ、それとも僕が言わなければ
ならないの?」
「言って!」
「君は恋をした、女を知った。」
「母が来たのです。初めてのキスで秘密の全てが
解ったのです。短い時間で女と神秘を僕に教えました。
夜が来たらすぐに行きます。僕を引き止めないの?」
「何故引き止めるんだね?ただ、その女との道のりは
短いよ。身内か夫がいるかもしれない。」
「僕を呼ぶ声がするんです。だから行くんです。」
ゴルトムントは黙ってため息をつきました。
2人は並んで腰掛け寄り添い合いました。
悲しく幸福な変らない友情を感じていました。
「僕の道は困難かもしれない。でも美しい道でしょう。
恋人を包み込むことと包み込まれることは別なんだ。
僕の為に犠牲になったあなたに感謝します。
あなたと別れるのは辛い。」
「僕たちの心を苦しませないでくれたまえ、君を
忘れないよ。何事かあった時にはどうか戻って
来るように。君を待ってるよ。
さようなら、ゴルトムント、神が君と共にいますように。」
ゴルトムントは立ち上がってナルチスを抱擁した。
彼が愛撫もキスも好きでないことを知っていたので
手をさすっただけでした。

ナルチスは独房を閉めて礼拝堂に行きます。
細身の姿が廊下の突き当り、教会へ続く扉の向うの
闇に消えました。

感覚に酔っている自分の愛と友の無償の精神化された愛、
それは奇妙で不思議な美しさがありました。
ナルチスは祭壇の前で跪き祈り、瞑想している、
自分は森に女を探しに行く。
夜中に教会で祈っている友の姿は、若く燃え立つ女よりも
まだ美しく思われるのでした。

Secre

プロフィール

Author:ミルティリおばさん
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イタリアに住むこと30と数年、
猫と2人暮らしのおばさんです。
翻訳フリーランサーです。
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英語とドイツ語はネイティブ翻訳者との
コラボです。

2011年来、若かりし頃のジャッキー・チェンに夢中です!
お気が向いた時にいつでもいらして下さい。
お気付きの点があったらコメントして下さい。
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