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リエンツィ

1842年の3月、ペッピーノの「ナブッコ」初演後
同年の10月に、リッチが「リエンツィ」を初公開しました。
リエンツィというのは中世ローマで平民執政官をしていた
主人公の名前です。舞台はローマ、カンピドーリオ、
(Campidoglio, 現在のローマ市役所)です。
無謀な貴族達に対立する民衆のお話でして、
バルヴァ・リットンの小説をもとにリッチが作詞作曲を
しました。当事流行していたグランド・オペラの影響下に
ありまして、古典風な音楽です。それ以前には「仙女」、
「恋愛禁制(シェイクスピアの目には目を)」なども作曲
していまして、大体3作目となります。

次の年の「さまよえるオランダ人」で、ワーグナーは
ワーグナーたり得た、と言われるのですが
真にリッチたり得るのは後期の「トリスタンとイゾルデ」
「指輪」からです。そこで彼は古典派(クラシック)の
調性くずしを始めます。音楽史上の革新者と言われる所以
です。無調性時代の産みの親というわけです。
因みにバッハ、ベートーヴェン、そしてワーグナー
この、お3人が革新者と言われます。

「リエンツィは」彼の古典として聴き易いし、整った
5幕です。1834年にベッリーニ(1801~1835)の
「モンテッキ家とカプレッティ家(ロミオとジュリエット)」が
ライプツィヒでセンセーションを起こしました。
話が飛びます。
ロッシーニ、ベッリーニ、ヴェルディの3人は
イタリアの白鳥と言われます。音楽の優美さ、デリケートさから。
これは私はベッリーニに限って賛同します。
ヴェルディやロッシーニには別の形容詞、喩えが相応しい
のではないですかね。
ベッリーニはショパンに影響を与えました。

ロミオとジュリエットは敵対する家同志に生まれた恋のお話ですが、
「リエンツィ」は彼の妹と敵対する貴族の息子アドリアーノの
恋、が大きな柱になっています。
民衆の味方であるリエンツィはローマ法王の使者がからんで、
最後には民衆からも貴族からも敵対視され、
大詰め、兄妹はカンピドーリオのバルコニーで演説を始めようと
するのですが、人々は「投石の刑だ」と石を集め、カンピドーリオに
火を放ちます。そこに駆けつけたアドリアーノ共に3人が炎に包まれて
しまう。
ヒットラーはこのヒーローを愛したそうです。

話が又飛びまして、Der fliegende Holländer、
「さまよえるオランダ人」の中の第2幕の水夫のコーラスは
男性的な力強さにあふれています。
ゴルトムントが逞しい男となってから、彼のバック・ミュージック
として「水夫の合唱」が聞こえて来ます。
(私の耳に、個人的に)
ヘッセはワーグナーをあまり好きではなかったけれど。

声量計測器で測ったことがあるのかどうか知りませんが、
耳で聞いた限りイタリア語の方がドイツ語よりも重さが
あります。
でも合唱曲ではヴェルディよりもワーグナーの方が力強い。
ヴェルディは花やかで勇壮ですね。

行け、我が想い

「ナブッコ」の第三幕(パート3)第4場で、
捕虜となり鎖に繋がれ強制労働をさせられている
エルサレム人(ユダヤ人)が故郷を偲んで歌います。

Va', pensiero, sull'ali dorate,
va', ti posa sui clivi, sui colli
ove orezzano tepide e molli
l'aure dolci del suolo natal!

  暖かく風の香る
  我等の大地へ、想いよ、
  金の翼に乗って飛んで行け、
  山々と丘の上で翼を安めよ

Del Giordano rive saluta,
di Sionne le torri atterate...
Oh mia patria sì bella e perduta!
Oh membranza sì cara e fatal!

  ヨルダン河の岸辺も
  シオンの打ち砕かれし塔もさながら
  斯くの如く愛しく痛ましい思い出よ!
  失いし美しい故郷よ!

Arpa d'or dei fatidici vati,
perché muta dal salice pendi?
Le memorie nel petto raccendi,
ci favella del tempo che fu!

  お前、偉大な詩人を導くムーサよ、
  何故、何も話さず嘆きの中に留まっているのか?
  我等の胸に想い出の火を灯し、
  過ぎ去りし日々を語り給え!

O simile di solima ai fati
traggi un suono di crudo lamento,
o t'ispiri il Signore un concento
che ne infonda al patire virtù!

  嗚呼、苛酷な宿命のソリーマの如く
  お前の声は嘆きを歌う
  この苦しみの中で神に導かれるお前の詩が
  我々の勇気とならんことを!

宮廷の言葉で、古語で書かれています。
台本は上から3行目のtepide、
tepide ではなくlibere だったのですが、ヴェルディが
変えたのです。エルサレムはシオン山の上に築かれた町です。で、
シオンの塔というわけです。
ソリーマはギリシャ語の呼び方で、エルサレムのことです。

suolo natal   故郷  祖国
concento     音楽
virtù       勇気
です。
比喩で書いてありますのは
Arpa d'or    黄金の竪琴、ミューズです。
salice      柳の木、これは悲しみ、嘆き です。

1815年からオーストリア支配下に置かれていた、
ロンバルディア、ヴェネツィアがイタリア統一運動の際に
この歌を歌って鼓舞、奮闘し、
やがてイタリアの第二国歌になりました。


  

    

ナブッコドノソール

ロンコーレからミラノに移り、
質素な家に住んでいた若いヴェルディ、
23歳でマルゲリータと結婚しました。
(早い結婚でしたね)

やっとオペラを依頼されました。
悲劇「オーベルト」と喜劇の「一日王国」です。
fiasco (大失敗)・・・でした。
時を同じくして2人の子供、娘と息子を失いました。
「一日王国」のスカラ初演の前日には息子が
亡くなってしまいました。その上、妻にも先立たれてしまった。
マルゲリータは脳炎で亡くなってしまったのです。

悲嘆に暮れるというより、落胆の底に落ちたヴェルディ、
「音楽はもうやめた!」
ミラノで人知れずに生活のための力仕事をする彼。
怒り、恨み、それにも増して果てしない孤独感。
ある日、もう決して音楽は書かないと頑なに拒む
ヴェルディのもとに歌劇場支配人の
バルトロメオ・メレッリがやってきました。
強情なヴェルデイのポケットにテミストクレ・ソレーラ作の
オペラの台本を押し込んだ。

興味のない彼は家に帰ってテーブルの上に乱暴に台本を投げ出した。
と、数枚が床に散らばり落ち、彼の目に止まったのは
第3幕4場の詩の数節、"Va' pensiero sull'ali dorate"
でした。この詩が彼の境遇に重なった。彼の片意地を払いのけ
閉じ込められた創作エネルギーが沸き上がって来ました。
「ナブッコドノソール」の創作の始まりです。
ナブッコが彼を取り戻しました。
毎日、少しずつ、一行、一節ずつ作曲して行きました。

初演が1842年3月のスカラです。主役を歌った
ジュゼッピーナ・ストゥレッポー二は後に彼の奥さんになります。
ペッピーノも言うとおり、彼の作曲家としての活動は
「ナブッコ」から始まりました。

「ナブッコドノソール」というのはバビロニア王の名前です。
省略してナブッコと言われます。
紀元前6世紀、エルサレムはナブッコに征服されました。
ナブッコは旧約聖書のネブカドネザルが原型です。
ナブッコの次女フェネーナを人質に取っているエルサレムの
指導者ザッカリアは結構強気なのですが、エルサレム王の甥、
イスマエレと人質の娘は相思相愛(これはアイーダと似ていますね)
結局2人が原因でエルサレム人(ユダヤ人)達はバビロニアに
捕虜として強制連行されてしまいます。

次女を次期王に着かせたいナブッコに怒り嫉妬した長女の
アビガイッレはナブッコの留守中に捕虜達とフェネーナを
無き者にしようと目論む。そこへナブッコが突然戻るのですが、
彼女は父親さえ倒そうとします。
戦争花やかなりし頃とはいえ、何とも怖ろしい事態ですね。
アビガイッレは父親たちバビロニア人と戦うことになります。

フェネーナとイスマエレが斬首されようと斧が振り上げられた
まさにその時にナブッコが阻止します。
ユダヤ人を解放し、ユダヤ教に改宗します。
ザッカリアに導かれフェネーナもユダヤ教に既に改宗して
いたのでした。
アビガイッレは自死。
相思相愛の2人は結婚を許されます。
やはり、めでたしめでたし、という事になります。

オペラという形式として観ると、音楽を中心に据えて観ると
良い作品ではあります。
何よりもペッピーノのオペラ誕生記念作品です。
当事は、それまでのオペラにはないドラマチックな内容で
激烈な音楽と評されましたが、好評ではあったわけです。

ファンになってしまいました、

櫻井よしこさんの!
ジャーナリストで、国家基本問題研究所理事長であり、
多くの執筆もなさっています。
ネット、及びチューブで彼女のサイトを見る事が出きます。

こ、こ、こんな方がいらしたなんて!
何よりも人間の品位と余裕を感じます。
頭脳明晰にして明確な説話。
無駄なく淀みのないお話しぶり。
蓄積されている膨大な資料。
膨大な資料はジャーナリストとして当然だとは思いますが。
国民は沢山の、そして何よりも正確な情報を求めて
いますから。(私もその1人です)

徹頭徹尾エレガントな櫻井さんと共に、対するように
思い浮かべるのがイタリアのジャーナリストの
ルチア・アンヌンツィアータです。
ドスのきいたコントラルトで話しまくります。
おばさん、数ヶ月前に彼女のことを間違えて書きました。
ハフィントンポストにこれから話があるのではなく
すでに昨年の9月から、そのディレクターをしています。


サルノ生まれで、お父さんが鉄道員でした。
子供の頃に育った、混み入った家々の路地に干す洗濯物が、
とても恥ずかしかったのだそうです。
そういうことはどうでも良いのですが、
そんな中で努力をしたのは特筆ものかなぁ、と。
哲学を修めた後、新聞社の特派員としてアメリカ合衆国、
南アメリカに数年間駐在しました。

論説委員、テレビ局のディレクターも勤め、
今まだRAItre 1/2h でニュース解説をしています。
しゃれっ気がないわりには恋も多い女性です。

彼女は討論する場合に、必ずテキスト(資料)を持ち出します。
資料を中心にツッコミを入れます。
これは当然でしょう。資料以外には正確な情報源は
得られないのですから。
櫻井さんも資料を1番大切になさっていますよね。

ジャーナリストをなさっていた(作家になる前に)司馬遼太郎さん、
男を書かせたら大変魅力的ですが、記者としては、あれ、
と首を傾げたくなるように思えることもあります。
それは又、次回ね。私は司馬さんを好きですよ。

櫻井さん、益々ご活躍を、出きれば次期外務大臣に!

宮崎駿 in Italia

Il Fatto Quotidiano という新聞に「風立ちぬ」の
宮崎駿監督が大きく取り上げられました。
「イル・ファット・クオティディアーノ」というのは
イタリアの優れたジャーナリストだった、
エンゾー・ビアージとインドロ・モンタネッリを記念して
新聞のマークに2人の名残が銘記してあります。
モンタネッリはイタリアの歴史を斬新に書いた人で、
興味深い記者です。機会のある時にご紹介を。

出し抜けに引退表明をした宮崎監督、新聞は
映写機の前から日本の偉大なアニメ制作者がいなくなる、
と言っていますが、いなくなっても描き続け制作し続ける
ということで、それは監督、引退とは言わないのでは・・・

「風立ちぬ」が最後の作品となり(これは私も見たいです)
永遠と思われたアニメの王がいなくなるのはファンには
ショックだ、そうです。(彼の作品は永遠だと思います)

アメリカのアニメ制作者、ジョーン・ラスターは宮崎監督なしには
ピクサー・アニメ・スタディオは存在しなかった、と。
マエストロ・宮崎のペンから普遍的な彼独特の様々な作品が生まれた、
登場人物は失うことを学び、生の意味を理解している、

マエストロはスタジオ・ジブリの新しい世代のために指導するでしょう。
しかし、彼の魔法の手を加えることなしに?
後に続く人達に芸術の宝の山を祝福します。
という記事で、コメントが41ほどあります。
その中のいくつかを、

・NOOOOO!!!!! 信じられない(引退が)

・想像の世界だが、より真実でよりシネマだ。

・賛嘆するマエストロ、どうしてあなたの傑作を忘れられよう

・沢山の傑作を有難う!笑いと涙を私たちに贈ってくれた。

ほんの一部分です。みんな若い子達のようです。
「ハイジ」「赤毛のアン」はいやと言うほど、こちらで
繰り返しています。でもその度に喜んで見る私。

もう、この年になると漫画はあまり見ないし、読まないし、
年取ってからも面白いのは「サザエさん」「パタリロ」
パタリロはバカバカしい(バカバカしいというのは最大の
賛辞ですよ)

昔、ドカベンの殿馬君のファンでした。それからブラック・ジャック、
ブラックジャック先生は医学生に人気があるのかしらね、
医学に精通していない私でも、これは変だと思う所もありますが
さすが漫画の神様、ストーリーの運びと詩情のある絵は
すばらしい。

ネットを巡っていてすごい漫画に出合いました。
山岸涼子さんの「パエトーン」
チェルノブイル事件と原子炉について説明しています。
原作者は広瀬隆さん、武谷三男さんです。

作中、山岸さんが登場して説明します。手塚さんも時々そうでした。
自画像の描き方が手塚先生と似ていて好感が持てます、でも
山岸先生自身はもっと美人だと想像します。
是非、御覧下さい。「パエトーン」でヒットします。


又又、追記です。
ヴェネツィア映画祭で坂本龍一さんが特別賞を受賞しまして、
これを書くのを忘れてしまいました。
ベルトルッチとも何度か共演、映画の曲付けをしています、
シネマ界でなくてはならぬ存在の坂本さんです。

それから宮崎監督は長編アニメから引退なさるのか、全く
引退なさってしまうのか分かりません。

新聞には rassicura i fan sottolineando che continuerà
a produrre, scrivere, sostenere e "immaginare" universi
da proporre alle nuove generazioni,
制作し、書き、助力し続け、全体の考案を次世代に提案することを
強調、ファンを安堵させている。

引退なさらない方が私も嬉しいです、監督。

クイズ その2

又又、クイズです。
日本語で書きませんでイタリア語で書きますので
誰の歌か当てて下さい。
当たった方には「初音ミクちゃんV3」をプレゼント!
ということは全くありません。
でも挑戦してみてね!
3人の音楽グループの歌です。

La luce e l'ombra della tramonto sulla città,
regalerò queste parole a voi che state partendo.
E' meglio piangere fino a esaurire le lacrime,
piuttosto che sorridere nascondendo l'angoscia.
Quanto più si sente amarezza,
tanto più si sente benevolenza.
Mi sembra troppo poco dirvi solo addio
per la vostra partenza, perciò vi lascio
queste parole come un regalo per voi.

Le parole si perdono nel vento della sera,
ma voi ascoltatele fino in fondo.
Preferireste essere feriti della sfiducia degli
altri,
piuttosto che lamentarsi di non poter credere.
Non pretendere la benevolenza degli altri,
perché questo è l'abili del vigliacco.
A voi che ho amato la prima volta,
regalo queste parole sincere.


Per voi ora inizia una nuova vita,
e nella vostra vita vi amerà qualcuno,
ma non ci sarà uno come me,
vi ho amato profondamente.
L'ombra che si confondono in mezzo alla folla.
Non giungerà più la mia voce,

Non sentirete più il dono di queste parole.

日本語で4行ほど。
 人は悲しみが多いほど
 人には優しく出きるのだから

 求めないで優しさなんか
 臆病者の言い訳だから、

この詩はおばさん、苦しかった。
短いけれど、なかなか六かしかった。
内容の意味は分かると思います。
「あなた」と歌っているけれど、
3年B組のみんなへ、ということで
あなた達にしました。
この歌もとてもヒットしましたね。

Le parole si perdono nel vento della sera,
ma voi ascoltatele fino in fondo.
 夕暮れの風に途切れたけれど、
 終わりまで聞いて 贈る言葉。

といった具合です。

こんな訳しでいいですか、金八先生?

追記です。(おまけ)

人は悲しみが多いほど
 Quanto più si sente amarezza,
人には優しくできるのだから
 tanto più si sente benevolenza.
 
quanto più と tanto più は量を表わす副詞、
数量副詞で結構 便利な言葉です。

求めないで 優しさなんか
 Non pretendere la benevolenza degli altri,
臆病者の 言い訳だから
 perché questo è l'alibi del vigliacco.


名詞を定義付け出きない時には冠詞、定冠詞を付けません。
これが少々複雑なんですけどね。

お邪魔しました、先生。

プロフィール

ミルティリおばさん

Author:ミルティリおばさん
住まいはイタリア、ペルージャです。
翻訳 フリーランサーです。

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