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Mamma Lucia マンマ・ルチーア

ナポリの南に位置するサレルノの近郊、
カーヴァ・デ・ティレーニの、
1人の女性の慈悲と惻隠のお話です。
女性の名はルチーア・ピサーピア、、
彼女はマンマ・ルチーアと呼ばれます。

第二次世界大戦が、今や終わろうとする頃の1943年、
容赦なく降りかかる米軍のB24の爆撃によって、ドイツの
ヘルマンゲーリング部隊は多数の兵士が死に至り、
町は破壊され、
生き残った部隊は死んだ仲間を放置して
退去してしまいました。
無数のドイツの若者たちが、列をなして死に行くのを
目の当たりにしたマンマ・ルチーアは、
「敗戦を超えるのは人間性だ」と解し、
埋葬を決意します。
戦争に散った700人の遺体を身元確認し、
何百もの個人の持ち物を取り戻しました。
フランチェスコ三次修道会のコースを修了していた彼女は、
埋葬されていない遺体を尊びながら、
ヘルメット、長靴、破れた軍服を遺体と共に
固定釘で埋葬の準備を始めました。

彼女は連合司令部に手紙を書きます。
「身元が分からない遺体の埋葬を許可して欲しい」。
司令部は、しかし「埋葬は市の役割だ」、との返事。
ルチーアは諦めることなく、カーヴァの市長に頼み込み、
サレルノ知事に願い出ました。そうして知事から許可が下り、
2人の墓掘り人夫が充てがわれました。
ルチーアが埋葬したのは、ドイツ人ばかりでなく、
アングロアメリカ人、マロッコ人、ポーランド人もいました。
ルチーアはただ1人で遺体の配慮、埋葬をしたのです。
彼女は軍服や国旗を目に止めませんでした。

1951年、イタリアの法律が変わりました。
戦争期間に亡くなった兵士と民間人の遺体の
人口調査と配置のための対策がなされるようになりました。
“Il Mattino” “L’Osservatore” “Il Corriere della sera”
といった大手新聞、ドイツの定期刊行誌によって、
彼女の活動は、すぐに人々に知られるところとなり、
ニュースが世界を駆け巡りました。
ローマ法王、ピオXII世から銀のメダルが贈られ、
また、ドイツ伍長の遺体を発見したところにより、
ドイツ連邦共和国から功労賞グランデクロスが贈られました。
1959年にはイタリア共和国から共和国総帥名誉賞が付与され、
彼女はサレルノ名誉市民となりました。

ジュゼッペ・マロッタが「母たち」というエッセイを収集し、
その中で彼女をこう描写しています。
「勇気ある女性、彼女はハイブリッドだ」。
(ハイブリッドというのは車に関してよく使われる言葉ですが、
この場合、ジェネラリスト、
様々な分野の知識や能力を持った人ということでしょう)
マロッタは、また「人々は、彼女の寡黙で慎ましい、謙虚で無垢な性情と
庶民としての判断に打たれたのでしょう」
「無邪気さ、飾り気のない純粋さ、そして厳格さ、類ない戦術、
出来事の整理の仕方の素晴らしさ」、
「夫の内気な干渉を拒否し、しかし彼女はいつもは柔和で、
そして誇りがありました」。

1982年、マンマ・ルチーアは天に召されました。享年95歳でした。
ニュースを聞いた、時の大統領、サンドロ・ペルティーニは
カーヴァ市長への手紙の中で、
「愛と連体認識の価値感は人間形成の基本だということを
知らしめた、マンマ・ルチーアの逝去の痛みに打たれました」

マンマ・ルチーアで連想しますのは、
「カヴァレリア・ルスティカーナ」に登場する
マンマ・ルチーアです。
トゥリドゥの母親で、村人たちから、
「マンマ・ルチーア」と呼ばれています。
居酒屋さんの女将でドラマの中心人物です。
このドラマも戦争が引き金となっています。
ベルガの原作では、
サントゥッツァは脇役というほどでもない役柄なのですが、
オペラでは変えられてしまいましたね。
第二次世界大戦後にイタリアの婦人たちが、
「サントゥッツァと共に涙した」という、
頻繫に耳にしないまでも、戦後、
時折あった話ではあったのでしょう。

Tenore BENIAMINO GIGLI - Cavalleria rusticana - Mamma, quel vino è generoso - (1919)
 マンマ、いい葡萄酒に酔わされた







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Author:ミルティリおばさん
住まいはイタリア、ペルージャです。
翻訳 フリーランサーです。

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